気仙沼2時00分
鮮度の高いヨシキリザメは、船上での処理が大切に
気仙沼漁港の魚の水揚げは、入札が始まる6〜7時にあわせて、その直前に行われます。この日水揚げを行っていたのは、近海マグロ延縄漁船「第三十七金栄丸」、ほか。夜の0時頃から準備を始め、1時から5時にかけて漁獲したメカジキやヨシキリザメを水揚げしていました。季節は1月の真冬、気仙沼漁港には雪がちらつき凍えるような寒さの中、ベルトコンベアを通して次々に揚がる魚たち。メカジキやヨシキリザメを始めとして、魚種によって分けられ入札を行う市場にキレイに並べられていきます。「第三十七金栄丸」の佐々木社長のほか、10名以上の乗組員が作業にあたりますが、船員のほとんどが外国人乗組員。飛び交う言葉は外国語と日本語が混じっていますが、そこは同じ漁業にたずさわるもの。お互いに外国語は話せなくても、なんとなくコミュニケーションが取れてしまうところに、現場の力を感じさせてくれます。
気仙沼の近海マグロ延縄漁業では、気仙沼を出港し4〜7日かけて漁場に到着します。漁場に着いたら約6時間をかけて投縄(釣針にエサを付けて延縄を流す)を行います。投縄を終了して、約5時間後から揚縄作業が始まります。この揚縄作業は約11時間も要し、針にかかった魚は舷門(げんもん)と呼ばれる上甲板の横から慎重に人力で引き上げられ、素早く内蔵処理や氷詰め作業を行ってから、低温の魚の保管庫に入れます。それらを繰り返し、「第三十七金栄丸」では約1ヵ月をかけて気仙沼漁港に戻ります。
特に年配の方に「サメ肉はアンモニア臭があるからおいしくない」という意見が聞かれますが、それは船上での下処理や冷凍保存技術が未熟だったころの話。現在は、ヨシキリザメに対しても適切に処理を行うため、お刺身で食べられるほど鮮度が高く、調理された白身はクセのない淡白な味わいとふわふわした食感が魅力です。
そのような鮮度の高いヨシキリザメを(フカヒレやすり身にする以外に)おいしく食べる方法を、いま気仙沼地域は一体となって見出そうとしています。これを読んだあなたも、街のどこかで「サメ肉」のメニューを見かけたら、ぜひ先入観にとらわれず試してみてください。「サメ肉」に対する概念が、きっと変わるはずです。
1ヵ月の漁から戻って来た漁船を迎える佐々木社長。現場にぴったりと付き、乗組員に指示しながら水揚げ作業の陣頭指揮を取ります。
震災から新しく建造された、最新鋭の設備が整った漁船。船首に掲げられた大漁旗が勇ましい。
ヨシキリザメやメカジキが保管庫から引き上げられ、ベルトコンベアに乗って運ばれます。この後、市場の人たちの手によって整然と並べられます。