伝統を守る美しさ
1688年創業、320年を超える日本橋にある老舗「神茂」。半ぺん・蒲鉾の製造販売をしていますが、中でも半ぺんは昔ながらの原料や製法にこだわり、現在もサメの肉を100%使用しています。「江戸時代、幕府は長崎俵物といって、フカヒレ、干しあわび、干しナマコを、外貨獲得のために積極的に中国に輸出していました。そのため、ヒレを取った後のサメの魚体が多く日本橋の市場に出回っており、そのサメ肉を利用して蒲鉾屋が作り出したのが半ぺんです」と、第十八代目主人の井上卓さんは話してくれます。
神茂では半ぺんの原料として、身質がしっかりしており、半ぺんの味のまとめ役であるアオザメを約4割、別名水ザメというぐらい身質が柔らかく、空気を抱き込みやすく、半ぺんの食感として不可欠なヨシキリザメを約6割と、長年この割合を守っているそうです。
また、神茂の半ぺんは、空気を含んでふんわり軽く、魚の旨みが口の中に広がります。これは、職人がひとつひとつ木べらを使って型に盛るなど、手取りで仕上げるため。代表的な商品の「手取り半ぺん」は、職人の技が生きた伝統的な製法で作られます。
「お客さまの中には、これこそが本当の半ぺんの味だ、とご愛顧いただいている方もたくさんいます。気仙沼のサメは品質も高く、神茂の半ぺんの原料としては最適です。昔ながらの製法にこだわって、これからも作り続けていきたいですね」。井上さんの言葉には、伝統を守る大切さ、老舗ならではの美しさを感じさせてくれます。
少し焼き目を入れると、表面に香ばしさが出てまた違った味わいが楽しめます。
- 日本橋 神茂 かんも
- 東京都中央区日本橋室町1-11-8
- TEL/03-3241-3988
- 営業時間/10:00~18:00(土曜~17:00)
- 定休日/日曜・祝日